「目標、会社に押し付けられてない?」ヤフー宮坂

「これからの上司の役割は『部下が活躍できる舞台を作ること』。才能と情熱を解き放ち、組織として成果を挙げていくことだ。ヤフーはこれから『人財開発企業』になる」

以前は四半期サイクルで行っていましたが、短期的な目標だけだと普段の会話が目先の利益・ノルマの話になりがちで、大粒なプロジェクトが前に進まなくなるという課題があったんです。

宮坂はニーチェの言葉を借りて「脱皮しない蛇は死ぬ」という表現を使うんですが、新しくてより大きな仕事を長期的な目標に置くことで、新陳代謝を上げようとしています。

目標を設定するときは、ヤフーではできるだけ「社員個人がやりたいこと」に目を向けるようにしています。

なぜなら、この世で一番小さいユニットは「個人」。その個人が今は偶然ヤフーという会社で一緒に仕事をしている。だけどそれぞれ時期が来れば、いつかは散らばっていくのも事実だからです。

宮坂も「自分株式会社」という言葉をよく使っていて、「自分という会社には仕事事業部だけでなく、趣味事業部、家族事業部もある。それを一人ひとりが自分でマネジメントし、意思決定する。そのうち仕事事業部(ヤフー)では、自分一人では解決できない規模の課題に取り組もう」、と。

ただし、チームで課題を解決していくということは、会社からの期待にも応えなければいけません。個人がやりたいことに目を向ける一方で、会社と目標のすり合わせはしないといけません。

だけどそのとき、「自分がやりたいこと」と「会社がやってほしいこと」がかならずしも完璧に一致している必要はありません。実際この2つが完全一致することなどあり得ませんよね。

ポイントは、同じか違うかの二択ではなく、重なる部分はどこなのかを探っていくことです。

登る山は多くても3つにしようと。4つ、5つだと結局登りきれませんから。1つだっていい。「この山はこういうテーマで、だけどこういう課題があるから自分はこういうことをやる。そうすることでこんな結果になるんじゃないか」と、自分の言葉で語れるようになろうと。

会社が期待する成果とのすり合わせをしたうえで、その人にとってちょっとだけ高く感じる、背伸びしてやっと届くくらいの高さの山がいい目標ですね。高すぎると、登り始める前から諦めムードになってしまいますから。

1on1ミーティングは、部下一人ひとりの才能と情熱を解き放つことを目指し、部下自身が仕事での経験を言語化することで学びに変える経験学習を促進する場です。

求められるのは「傾聴」です。部下がどんな意見を言ったとしても、とにかくその話を最後まで聞き切る。そうすれば、部下は「聞いてくれている」と感じ、「自分のやりたいこと」をもっと語り始めます。

慣れないと部下の話をさえぎって上司が話し始めてしまうこともあるでしょうけど、傾聴は「スキル」なんです。つまり、練習すればできるようになる。

極端な言い方をすると部下の話に適切にうなずいたり、部下の言ったことを丁寧に反復したりするだけでも、部下とのコミュニケーションがかなり変わるんです。

部下から出てきた意見が、上司の考えや会社の方針と合っているか、世間的にどう思われるかはあとで考えればいい。まずは部下の考えを表に出すことに集中し、傾聴することが肝心です。

「部下の話をよく聞く」というマネジメントスタイルって人に優しい感じがしますけど、かならずしもそうではない。しっかり話を聞いた上で、部下の成長に役立つなら、厳しいこと、言いにくいことでもハッキリと伝えることがセットです。

問いかけに対し「3年後のことなんて分かりませんよ」と、その場では部下が答えられなかったとしても、聞かれることで一人の時間に戻ったときに「あの場では思い浮かばなかったけど、そういえばこんなことやりたかったんだったよな」と、考えるきっかけになります。

いきなり「将来、何やりたいの?」なんて尋ねるのは照れ臭く感じたり、踏み込み過ぎだと遠慮する気持ちが働きそうなものですが、聞かれた部下のほうはそれほどでもないと思います。

案外ポロっと今まで聞いたことがないような話が出てくるかもしれません。その話は今後、その部下と接するうえで上司にとっては大事な情報になりますよね。

こうしたやり取りの中で大切なのは、ヤフーの管理職向け研修では「承認」という言葉に絡めて紹介していますけど、まずは相手の考えを一旦そのまま受け止めることです。

簡単ではないけれど、部下の意見に賛同するかしないかは後まわしにして、「部下の考えは何か」そして「部下がなぜそう考えたのか」に耳を傾けてほしい。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA