苦手でも練習する

シュミットらは、ビル・キャンベルの成功の秘訣は、率直なコミュニケーションによって職場に信頼と愛を持ち込んだことだと喝破する。

いくら優秀でも、人を大切にし、本気で人間関係にコミットする姿勢が欠けていたならば、成功はおぼつかない。成功するために必要なのは必ずしも「頭のよさ」などのわかりやすい優秀さだけではないのだ。

それでは、コミュニケーション下手の内向型人間はどうすればいいのか?

これについて、のちにアドビのCEOにまで上り詰めたブルース・チゼンが出世を決めたエピソードが好例となる。

ビルはおそらく私たちの知るなかで最も「人間好き」な人だった。

では、もともとあまり外向的でない人はどうすればいいのか? 練習だ。

「まずは人の名前を覚えるようにした」とブルースは言う。「エレベーターで乗り合わせた人に話しかけ、調子はどう、何に取り組んでいるのと尋ねた。カフェテリアでは思い切って初めての人たちと食事をした。性に合わなくても頑張ってやってみたらいい結果につながったよ」

エレベーターに乗ったとき、廊下で誰かとすれちがったとき、カフェテリアでチームを見かけたとき、ちょっと立ち止まって話をしよう。ブルースの決まり文句もよいきっかけになる。「調子はどう? 何に取り組んでいるの?」。そのうちさまになってくる。 

「人間関係を築くことは、僕にとって自然にできることじゃなかったが、努力した」とブルースは言う。「さいわい、次第に無理なくできるようになる」